先日、マニング出版(Manning Publications)というニューヨークの出版社から唐突に「こういう提案書が送信されたんだけどどう思う? レビューをお願いできないか? 」と脈絡のないメールがありました。
「Proposal? レビュー? どういうこと?」と全くつながりのない会社からの突然の依頼に驚きつつも、提案書が興味をそそられるトピックだったのでレビューに参加した体験記を残します。
連絡をいただいたマニング出版の方にこの記事を書く許可をもらいましたが、提案書やその結果生まれるコンテンツはまだ公になってないため内容には触れられないことをご了承ください。あくまで具体的な内容ではなくマニング出版からきたレビュー依頼のプロセスのお話として読んでもらえればと思います。
@L_e_k_o
までご連絡を私はあまり本を読まないのでマニング出版と聞いてもピンときませんでした。知り合いからもこういった形式のレビューの話を聞いたことがなく接点がありません。
似た体験をした人を調べたところ、こちらの記事がヒットしました。この方も突然レビューの依頼があったようです。
Manning はアメリカの技術系出版社で、日本で翻訳書が出るときには、オライリージャパンをはじめ色々な出版社からでること、その際に表紙も変えられてしまうことも相まっていまひとつ存在感がないかもしれないけれど、jQuery の John Resig 自らが著者に名を連ねる Secrets of the JavaScript Ninja や、Keras の François Chollet が書いた Deep Learning with Python、ちょっと毛色が変わったところでは、higepon さんオススメの Soft Skills まで、手広くやっている。
聞いたことない出版社だと思っていたのですが Soft Skills を社会人になりたての頃に読んだ本でおり、知ってる出版社でした。独特な絵画っぽい表紙が多いので表紙見たら思い出しました。
ちなみに Twitter で認知度のアンケートを取ってみた結果はこちらです。N が少ないですが半数以上の方はマニング出版を知りませんでした。
マニング出版を知ってますか
— Leko / れこ (@L_e_k_o) August 6, 2020
そんなマニング出版がliveProjectという e ラーニングのサービスを運営しています。
コンテンツの方向性が振り切ってて面白いなと思いました。理論から学ぶ体系的な学びではなく先進的で実戦的な分野を攻めるという現場寄りな絞り方が面白く興味をもちました。
what is liveProject?
real projects for real learning
liveProjects are based on real-world challenges. You’ll have peers for support , and you’ll get free access to books and videos from Manning.comhands-on experience
You’ll solve practical problems, write working code, and analyze real data. As you know, the best way to master a subject is by creating something that worksbuild cutting-edge skills
Learn technology so new you’ve only read about it, and bring new skills to your team. Boost your career by staying ahead of the curve
今年の4月末にプレスが出ているので、まだサービス開始から間もないようです。
先駆者の方の記事は 2 年前に書かれているのでおそらく物理 or 電子書籍のレビュー依頼の話で、私はこの web サービスから依頼がありました。
A Manning liveProject is a project for you to complete. Tackle a real-world scenario, and learn new skills as you go. Choose from a range of projects in data science and software development. You’ll develop your own solution and get just enough help to succeed!
— Introducing liveProject. Learn by doing. Build your tech skills… | by Manning Publications | Medium
そんな liveProject というサービスに提案書を持ち込み審査に通れば自分のコースを作れるようです。今回提案書を持ち込んだ方もマニング出版や liveProject の中の人ではなく全く別の会社に勤めてる方です。
外部から liveProject に持ち込まれた企画が妥当かどうか、技術的な観点からバイアスのない意見がほしいという依頼のようです。
マニング出版の紹介はこれくらいにして本題に移ります。
具体的に依頼されたタスクは以下の通りです。
提案書を読んでレビューするだけなので作業量に無理はないですし、提案書で取り扱っているトピックも面白いと思いました。また、提案書もレビューも英語なので英語で社外活動する機会だと思って依頼を請けました。
ちなみに無償ではありません。金銭はもらえませんが、同社から出版されている電子書籍または現在執筆中の原稿(MEAP=Manning Early Access Program)から1冊、または liveProject のコース1つのいずれかが貰えます。
提案書のフォーマットは以下の観点で記述されています。
「具体的なシナリオ・ユースケース・問題定義」がかなり具体的に書かれており、どのような背景で(技術的に解決すべき)ビジネス上のはなにで、なぜこの技術選定で問題解決に挑むのかなどなど、現実にあるある~と想像できる現場像が想定されてました。またマイルストーンごとにどれだけ時間をかければ学習を完了できるかを見積もっており、そのスケジュールに収まらない場合の代替手段なども考えられています。これは liveProject の売りの1つで「短期間で先進的で実戦的なスキルを得られる」ことに根ざしていると思います。だいたい 1 日 1-2 時間くらいで進めたら 10-15 日くらいで終わるかなというボリューム感でした。
提案書を読んで、自分よりはるかに実績のある人が、その裏付けとなる専門的で体系的な知識をもとに書いていると感じられました。カンファレンスの登壇やメディアへの寄稿などもしているようで話の書き方がうまいと思いました。技術的には自分が似たようなものを作った時とは大枠同じだけど技術選定が少し異なっており、その差異がいい気づきになったし早速試してみたいと思いました。
気づきもあったし面白かったのでこの提案書のレビューに携われてよかったと感じました。
そんな提案書を読んだ上で、マニング出版が用意した 20 個程度の設問に回答します。主な設問はこんな感じでした。
アンケートに答えてみて、とにかくコンテンツ数を増やそうという感じではなく、サービスとしてのクオリティコントロールに力を入れていると感じました。その分野に詳しくない人が適当に「よく分からんけどなんか良さそう」とは回答しにくいような圧を感じる設問が多かったです。
ただ、GitHub で見かけた程度のエンジニアにランダムに連絡を取ったとしても提案書のトピックとその人の技術的背景が一致するとも限らないので、どうやってテーマのマッチング率を上げているか気になるところです。
依頼を完了した後に少しお話したのですが、liveProject で Node.js に関連するコースの提案を持ち込んでくれる人を探しているそうです。初学者向けの入門書ではなく実践的なコースを作ってみたい方がいたら@L_e_k_o
までご連絡いただければ担当の方につなげます。
最初はなんかの迷惑メールかと思ったのですが、スルーせずに受けてよかったです。面白かった。似たようなメールが届いたときにはぜひスルーせずに依頼を受けてみてください。